梟の系譜 宇喜多四代

梟の系譜 宇喜多四代

梟の系譜 宇喜多四代

天文三年(1534年)、備前・砥石城へ浦上家の重臣・島村宗政の軍勢が押し寄せてきた。守勢は、もう一人の重臣・宇喜多能家。一時は主家をしのぐ名声を得た能家であったが、8年前に中風を患い隠居の身となっていた。戦陣にも立てない能家は籠城を諦め、息子・興家と孫の八郎を城から落ち延びさせることを決意する。能家最期の抵抗の間に城を脱出した興家親子の、食うにも事欠く放浪の旅がはじまった。追手を避け一時は旧師の寺を頼り、その後は備前福岡の豪商の家に親子で身を寄せる。能家の敵討と宇喜多家再興を果たせぬうちに、興家は商家の娘を後妻にもらい、義母と折り合いの悪い八郎は商家を飛び出す。近くの寺で過ごすうちに月日が流れる。父・興家は商家で亡くなり、毛利氏や尼子氏の跋扈する中国地方の情勢も風雲急を告げ、直家と名を変えた八郎は旧主・浦上宗景に召し出される。梟雄・宇喜多直家が踏み出した最初の一歩だった。

流浪の身となった八郎がどん底から這い上がっていく過程を描く前半はすごぶる興味深く一気に読んだ。商いを知ることによって世間を見る目を養い、力をつけていくのも面白い。主人公が八郎から直家に名前を変え戦国武将になっていくぐらいから書きようがダイジェスト風になってしまいテンションが下がってしまうのが惜しい。同じ著者の最初の単行本で孤闘という作品もとても良かったが似たような欠点があった。後半特にドラマチックな展開があり主人公以外にも有名武将が登場するのでここは書き込んでもらえればもっと凄みや厚みも出たように思う。それでも宇喜多直家という人物の波乱の人生や独特の生き方はきっちり描けているので本を閉じるときには深い余韻はあった。おそらくは枚数的に収めるため流さざるを得ない部分もあったとは思うのでいずれもっと分量の多い大作を著者には書いていただきたいところ。

孤闘―立花宗茂

孤闘―立花宗茂