女の陥穽: 御広敷用人 大奥記録(一)

女の陥穽: 御広敷用人 大奥記録(一) (光文社時代小説文庫)

女の陥穽: 御広敷用人 大奥記録(一) (光文社時代小説文庫)

八代将軍となった徳川吉宗は幕政改革に乗り出した。手はじめは贅沢三昧をしてきた大奥の粛正。そのため以前、勘定吟味役として利用していた水城聡四郎を御広敷用人として登用した。吉宗の密命を実行せんと調べ始めた聡四郎の前に「影」が立ち塞がる。一放流の達人、聡四郎は密命を成し遂げられるのか。待望の「水城聡四郎」新シリーズが壮大なドラマとともに登場。

勘定吟味役シリーズは面白く読んでたんだけれど主人公の成長譚としては中途半端に終わった印象があるので水城聡四郎の再登板は大いに歓迎するところ。とはいっても勘定吟味役異聞を一冊も読んでいなくても単体のシリーズ一作目として楽しめるようになっているのがなかなかに親切設計。しかしなんというか本格的に主人公が動き始めたところで続く、になっちゃいましたな。その分欲得渦巻く人間関係や陰謀はみっちり仕込んできているので次巻以降の盛り上がりに期待してよさそうだ。ラストシーンからしても今後は歴史ミステリーにもなっていく予感。とりあえずは魅力的なシチュエーション作りが巧いし前シリーズからの読者としては後日談としても面白かった。それにこの作品に限らず上田秀人作品全般に言えることだが、時代小説の枠の中からも現代の日本に突き刺さるテーマを訴えようという作者の姿勢が好きだ。

破斬―勘定吟味役異聞 (光文社時代小説文庫)

破斬―勘定吟味役異聞 (光文社時代小説文庫)