ドライヴ

ドライヴ [Blu-ray]

ドライヴ [Blu-ray]

ブルーバレンタイン』のライアン・ゴズリング主演によるクライムサスペンス。昼はハリウッドのスタントマン、夜は強盗の逃走を請け負う運転手の“ドライバー”が、危険な裏社会の抗争に巻き込まれていく姿を描く。

犯罪映画としてよく出来ているし台詞の少なさ、寡黙でクールなタッチはまさに久々のハードボイルド。しかしこの作品の場合本質はそこの部分でなく独特の異様なセンス。男性的なノワールを女性的エレガントな演出でコーティングしたような感じ。定番でありふれたストーリーが光の当て方で見たこともないようなきらめきを見せる。物静かな場面はさりげにロマンチックだし純愛描写が淡々としながら美しい。それが獣が唐突に野生化したかのごとく猛烈なバイオレンスシーンにいきなり突入するのもハッとする。このあたりは暴力描写として優れている、というよりシュールリアリズム表現の域まで達していると思います。特にエレベーターの場面のインパクトが凄いですね。ロマンチシズム、バイオレンス、ナルシズム、融合するはずのないものが見事に調和したこの作品を象徴する名場面ではないでしょうか。で、時にはミスマッチのようにさえ聞こえる音楽センスも不思議なんですがそのおかげで場面場面が焼きつくように心に残っちゃうんですよ。画面の色彩に味があるしスタイリッシュの塊のような作品ですがスタイルに溺れていないのがまたたまりません。宗教画のように荘厳に見えたりポップアートのようにキュートであったり。こういう雰囲気のクライム映画はこれまで見たことないです。あとカーチェイスメインの映画かと思ったらそうではなかったですが冒頭の逃走シーンの息詰まるサスペンスと疾走感が素晴らしくあれだけで満腹になりました。

ドライヴ〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕

ドライヴ〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕


原作買ってきたので読んでみよう。