シークレット・ハニー 1.船橋から愛をこめて

―男だったら、一度は世界を救ってみたいものである。そんなことをぼんやりと考えるごく平凡な男子高校生・五十六のもとにある日、キャサリン・涼音という美少女がホームステイとしてやってくる。五十六と親密になるために、不自然さ全開で迫ってくる涼音から逃げ回っていると、今度はバイト先でまた別の美少女・ターニャが近づいてきた…。突然の不可解なモテ期に困惑する五十六。実は彼は、スーパーコンピューター『フロンティア』に「世界崩壊の引き金になる」と予言されていて―。ターゲットの秘密を調査するべく、美しきエージェントたちが五十六に接近する、ハニートラップ&アクションが堂々開幕。

ライトノベル的にはいわゆるハーレムものになる作品なんですが主人公が枯れた感性の持ち主で色仕掛けで迫られても冷静に疑心暗鬼になる、という展開は妙な可笑しみがありハーレムラノベのパターンを軽く批評的に書いているようにも思えます。そりゃある日を境に複数の外国人女子に迫られまくったら鼻の下を伸ばすより何か変だ、と思うわな。それと冒険小説やスパイ小説を私は読み込んでいるのでそのジャンルのパロディものとしても楽しみました。ただハニートラップ&アクションという惹句にもっとぶっ飛んで馬鹿馬鹿しいぐらいのものを期待していたんですが、わりとおとなしめでしたな。格闘描写や後半のアクション場面も迫力あっていいんですがいかんせん、分量が少ない。まあこの作品は深見真特有のアクの強い部分を封印して書いたようだし、あとがきで言っているように「優しい話」を目指したものですからそこをメインに期待するのも違う話かな。それに作者の言う「優しさ」というのも伝わってはきましたし。これはこれでアクション・コメディとして愛すべき作品だと思います。さてこれもシリーズ化前提のようで、どう続けていくんでしょうか?この作品で物足りなかったアクの強いバイオレンスはそっち方面全開の深見作品がちゃんとあることだしそっちで堪能するとしましょう。