戸隠秘宝の砦 三部作

戸隠秘宝の砦 第一部 吉原惣籬 (小学館文庫)

戸隠秘宝の砦 第一部 吉原惣籬 (小学館文庫)


戸隠秘宝の砦 第二部 気比の長祭り (小学館文庫)

戸隠秘宝の砦 第二部 気比の長祭り (小学館文庫)


戸隠秘宝の砦 第三部 光芒はるか (小学館文庫)

戸隠秘宝の砦 第三部 光芒はるか (小学館文庫)

江戸時代の天保期、諸藩の財政は危機的状況にあった。松枝近忠は、自分が府内藩当主である大給近訓の実子であることを告げられる。そして、近訓から藩の財政的な窮状を救うために、秀吉が遺したという百万両に相当する財宝を探し出すよう命じられた。その秘宝は、対外貿易で潤沢に蓄えたもので、長崎から秘密裡に運び出されていた。その中心にあったのは石田三成、三成が協力を依頼したのは、大谷吉継真田幸村、実際に動いたのは、長崎奉行の寺沢広隆と敦賀の廻船業者である高島屋伝右衛門だった。そして、ギヤマンの皿と奉納の絵馬、宝刀の茎(なかご)が揃わなくては財宝の場所がわからず、収められた石窟を開けることができなかった。近忠が、この話を聞いたとき、密かに盗み聞きをしていた男がいた。それは、その当時処刑されたことになっていた鼠小僧次郎吉だった。次郎吉は、実はその秘宝に所縁のある家の末裔だったこともあり、秘宝を探し始める。さらには、ギヤマンの皿を持っていた高嶋屋伝右衛門の子孫、五郎左衛門や高嶋屋と昵懇の仲にある小浜藩も秘宝を得ようと動きはじめる。全3冊でお送りする伝奇時代小説、第1弾。

財宝探しの伝奇ロマンで時代小説では定番のジャンルなんですが文庫書下ろし時代小説では市井物や捕物帳的な作品やシリーズが中心な状況でこういう波乱万丈で娯楽性の高い作品が出てくるのは嬉しいですね。お宝をめぐっての三つ巴の争いも各巻それぞれに趣向が違ってサスペンスフルで読ませますが一方で著者のしっとりした文章が哀切な人情であったり、道中記になれば旅情であったりなど、活劇ばかりでなく作品に情感が与えているのもたいへんよろしい。スチーブンソンの『宝島』の日本版を目指したということで時代小説という型にこだわらなくても冒険ロマンとしてなかなか面白いです。